外山滋比古『国語は好きですか』
高校時代、国語が嫌いでした。かなりの苦手科目で、共通一次(現在のセンター試験)受験の足手まといだったからです。それが理由で理系に進んだようなものです。
また、英語は比較的得意だったことや、「日本語はあいまいで特殊な言語」といった俗説もあり、受験科目としての国語が嫌いだっただけではなく、日本語というものをずっと軽視していました。
しかしここ10年ぐらいの間に、いつのまにか、嫌いだった国語の方が英語よりも愛着を感じるようになっています。
おそらく、10年ほど前に読んだ 『国家の品格』とか、5年ほど前に読んだ『日本語に主語はいらない』に影響されたのだと思います。
すみません、前置きが長くなりました。
そういったような背景があって、昔なら見向きもしなかっただろうと思われる本書を手に取りました。
ロングセラー『思考の整理学』の著者外山滋比古氏による『国語は好きですか』です。
- 作者: 外山滋比古,唐仁原教久
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2014/06/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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グローバル化、情報化が進む今、敢えて「国語」の大切さを問いかけたい。国語と日本語の違い、表記と正書法、縦書きと横書き、「話す聞く」教育や敬語、小学校英語の問題など、多彩な話題を通して、国語を尊重する「文化的ナショナリズム」の意義を論じる。ことばを見つめ続けてきた碩学が熱く語る、渾身の国語論!
小学校から高校まで避けては通れない国語の話ですし、毎日使っている日本語の話題ですから、気軽に面白く読める本です。
特にナルホド!と腑に落ちた「あいまいの美学」と題する章に書かれている内容をかいつまんで紹介します。
明治以降、外国語に触れた日本人を苦しめている問題の一つに「日本語は論理的ではない」という命題があります。何故そうなったのか・・・
外国の文章を訳してみると、わけの分からない日本語になり、うまく筋が通らない。原文はそんなことがないのだから日本語がいけない、それは論理的ではないからだ、と考えた。「外国は進んでいる、日本は遅れている」というコンプレックスでこり固まっている人間がそう判断することは仕方のないことだったのです。
しかし考えてみると、外国語が独立言語なら、日本語もりっぱに独立した言語である。外国語にある論理が日本語にない、というのはありえないと反問するのが当然。それを100年もの間怠って、日本語は非論理的であると勝手に決めてしまった。はっきり断言する勇気もないから、ひそかに思いわずらってきたのです。
昔から何不自由なく日本語を使ってきただけでなく、和歌や俳句という高度な文芸を発達させているので、わけ分からない言語であるはずがない。確かに、英語やドイツ語と比べて著しい特性をもっているのも事実であるが、論理がないのではなく、ヨーロッパの言語とは異なる日本語なりの論理があるはずなのです。
しかし、そういった少し外国語の勉強をすれば大学生にも分かることを、明治以降の日本の知識人は考えようともしなかったのだ。
・・・と著者は断罪しています。
その他のトピックスとしては、
- 縦書きと横書き
- 主語の問題
- 英語の授業について
- 文化的ナショナリズム
など、この歳になって国語ファンになった私にとっては面白い話題が満載でした。
『国家の品格』の著者である数学者の藤原正彦氏、本書の著者である英文学者の外山滋比古氏、ともにそれぞれの専門を通じて日本語を学ぶ重要性を説いているのが興味深いところです。
ではまた…
- 作者: 藤原正彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11
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- 作者: 金谷武洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/01/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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