曽野綾子「人間にとって成熟とは何か」
本の帯に「45万部突破」とあったベストセラーを読んでみました。
曽野綾子さんは、新潟県中越地震のとき「避難所で救援物資を当てにして待っている避難者は甘え過ぎだ」というような発言をしたり、「二次方程式の解の公式は追放すべきだ」といって中学校数学の必修事項でなくしたりしている方で、批判されることも多いようです。
本書は、Amazonレビューでも賛否両論です。だからこそ、面白いと思います。
私が読んでみた感触としては、著者の主張にだいたい賛成の立場です。もしかしたら、自分に都合のいい意見だけを受け入れて、合わない意見は読み流しているだけかもしれませんが。
付箋紙を貼った所のうち、2カ所を引用しておきます。「権利」と「ボランティア」です。
最近、私の周囲を見回すと、実にもらうことに平気な人が多くなった。「もらえば得じゃない」とか「もらわなきゃ損よ」とか、そういう言葉をよく聞くようになったのである。「介護もどんどん受けたらいいんじゃないの。介護保険料を払っているんだから、もらわなきゃ損よ」とはっきり言う。
その多くが一方的な善意の押し売りであり、その効果の最大のものは自己満足なのである。そう言うと怒る人がいるだろうが、いても別に不思議ではない。「私は人のためにしているの」と信じる人が大多数だ。「これは私が時間つぶしにやっているんですから」とか、(中略)言った人がある時いたが、むしろその方が本当にボランティアという行為を正当に認識している、と私は思っている。
確かに、Amazonレビューにあった「典型的なお年寄りの自慢、愚痴、不平不満を聞かされている様な気分になりました」というような批判も、ある意味そのとおりかもしれません。しかしながら、せっかく読むのですから「ほんの一部分でも学ぶべき所はある」というスタンスで接した方がいいのではないでしょうか。
私にとっては、考えを改めさせられるきっかけが複数あり、有益な本でした。
まだお読みでない方向けに、目次を転記しておきます。
- 正しいことだけをして生きることはできない
- 「努力でも解決できないことがある」と知る
- 「もっと尊敬されたい」という思いが自分も他人も不幸にする
- 身内を大切にし続けることができるか
- 他愛のない会話に幸せはひそんでいる
- 「権利を使うのは当然」とは考えない
- 品がある人に共通すること
- 「問題だらけなのが人生」とわきまえる
- 「自分さえよければいい」という思いが未熟な大人を作る
- つらくて頑張れない時は誰にでもある
- 沈黙と会話を使い分ける
- 「うまみのある大人」は敵を作らない
- 存在感をはっきりさせるために服を着る
- 自分を見失わずにいるためには
- 他人を理解することはできない
- 甘やかされて得することは何もない
- 人はどのように自分の人生を決めるのか
- 不純な人間の本質を理解する