igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

池澤夏樹『世界文学を読みほどく』を読んだ(その1)

本書は、2003年9月に作家の池澤夏樹さんが京大で行った7日間の連続講義の講義録です。  

世界文学を読みほどく (新潮選書)

世界文学を読みほどく (新潮選書)

 

 対象となっているのは、19世紀と20世紀の欧米の長編小説で、以下の十編です。

お恥ずかしながら、一つも読んだことがありません。


本書は400ページもある分厚い本ですが、学生向けの講義ということもあり、非常に面白くあっという間に読んでしまいました。導入部分の「総論」のあと、10冊の小説を1冊ずつ解説していくという形式です。それぞれの解説もいいのですが、はじめの「総論」が特に面白く感じました。


解説を読んで、十編のうち正直読まなくてもいいと思ったのもあれば、今すぐにでも読んでみたいと思ったものもあります。一つとして読んだことのない私は、当面の目標として、5つ読もうと決めました。


必ず読むつもりなのが、「カラマーゾフの兄弟」と「ハックルベリ・フィンの冒険」。

カラマーゾフの兄弟」は以前チャレンジしたんですが、全体の1/4ぐらいのところで挫折していました。「ハックルベリ・フィンの冒険」は「もしドラ」作者の岩崎夏美さんが書かれた「小説の読み方の教科書」で紹介されていて気になっていました。

3番手は「百年の孤独」。この小説の存在を知っていたことと、本書の巻末に家系図などの解読キットが付属しているからです。

 

以上3つ以外は、名前すら知りませんでした。あと7つのうち、解説を読んで是非読みたいと思ったのは、フォークナー「アブサロム、アブサロム!」とピンチョン「競売ナンバー49の叫び」です。以上5つの作品については、池澤さんがどのように解説されているのか、別の記事(その2)で紹介したいと思います。

 

本来は、予備知識なしのまっさらな状態で読むのが一番なのでしょうけど、ここで紹介されている作品は、予備知識がなければ、何の武器も持たず丸腰で戦場に行くようなもので、まったく歯が立たない(途中で挫折する)可能性が非常に高いと思います。


ですから、これらの小説について、

  • 文学史ではどのように位置づけられた作品なのか
  • 何がテーマなのか
  • どんなあらすじなのか

といったような作品の全体像をあらかじめ知っておくことは、むしろ必要なことなのではないかと思いました。

 

自分にとっての(音楽で言えば)ベートーヴェン交響曲第3番やブラームス交響曲第4番のような、何度も読み返す味わい深い古典となる小説に巡り会えるチャンスではないかと考えています。クラシック音楽と同じで、「これはいい!」と思えるようになるまで時間がかかるのかもしれませんね。

 

それから蛇足ですが、本書は講義録のため、foreignに「国」の概念はないのにforeign languageを「外国語」と訳すのはおかしい、とか しばしば脱線があるのですが、それがまたけっこう面白いです。

 

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

 
ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

 

 

【追記】池澤夏樹『世界文学を読みほどく』を読んだ(その2) - igawa's Blog