「よみうり堂」の書評から選んだ『忘れられた巨人』ほか1冊
日曜日の新聞記事なんですが、今週は遅くなりました。
カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』(評:評論家・作家 松山巖)
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2015/05/01
- メディア: 単行本
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たまたま5月末に、カズオ・イシグロの長編『日の名残り』 を読み終えたばかりでした。とてもいい小説でしたので、近いうちに紹介するつもりです。その最新刊が出たということで、訳者が気になったのですが、『日の名残り』と同じ土屋政雄さんでしたので安心しました。本作は「戦争の記憶」がテーマだそうです。
物語は老夫婦が、隣人たちから疎んじられ、息子の暮らす村に行こう、と思い立つことから始まる。しかも世界は謎の霧で覆われ、人々は記憶を失っている。だが老夫婦は旅をするうちに、少年や魔物退治する勇者、アーサー王の盟友の老騎士と出合い、様々な体験をするうちに少しずつだが、記憶が戻ってくる。
ここで作者は<戦争の記憶>は、果たして人間に救いをもたらすのか、再び戦争を起こす火種になるのか、という疑問を読者に問いかける。しかも記憶は老夫婦の間にも思い出したくない事実まで呼び起こしてしまうのだ。
坂井豊貴『多数決を疑う』(評:東京大教授・経済学者 松井彰彦)
- 作者: 坂井豊貴
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/04/22
- メディア: 新書
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多数決による選挙は、果たして人々の意思を適切に反映しているのでしょうか? そうではないとしたら、多数決に代わるルールが果たしてあるのでしょうか? 本書は、社会的選択理論の専門家である著者が、人々の意思をよりよく反映できる選び方について、科学したものです。
投票とは人々の意見を集約するためのルールだ。多数決はその一つに過ぎない。著者はその視点から様々な〝私たちの決め方〟を探っていく。
社会制度は私たちが決め、作るものだ。為政者はもちろんのこと、社会の成員全てに読んでいただきたい必読書の誕生である。
ではまた…