楠木建『「好き嫌い」と経営』
『ストーリーとしての競争戦略』で有名な(読んだことありませんが)知る人ぞ知る楠木建さんの本です。
- 作者: 楠木建
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2014/06/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「好き嫌い」というキーワードにつられて買っていたのですが、積ん読の山に埋もれていました。ところが先日、「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2014」の第2位になっていることを知り、ランキングに影響されやすい私ですので、さっそく読んでみました。
"企業戦略の創造は経営者の直観やセンスに依存しているが、根底にはその人を内部から突き動かす「好き嫌い」があるのではないか"というのが、著者がこの本を書くきっかけとなった仮説です。本書は、著者と経営者との「好き嫌い」についての対話を通じて、経営や戦略のベースにある本質に迫ったものです。
登場するのは、柳井正(ユニクロ)、出口治明(ライフネット生命)、永守重信(日本電産)、新浪剛史(ローソン)、原田泳幸(日本マクドナルド)、藤田晋(サイバーエージェント)、大前研一(経営コンサルタント)《敬称略》をはじめとする14名の経営者です。
「まえがき」より少し引用します。
事業コンセプトの創造は、論理演繹的なプロセスというよりも、その経営者の直観やセンスとしか言いようがないものにかかっている。その元をたどれば、その人の好き嫌いに突き当たる。フェイスブックにしてもアマゾンにしても、開花した事業コンセプトは経営者の理屈抜きの好き嫌いと深いところでつながっている。良し悪しの判断を繰り返して生まれたものではない。直観の根底には、常にその人の好き嫌いが横たわっている。
対談に出てくる「好き嫌い」の一例を紹介すると、こんな感じです。
原田泳幸さんの嫌いな男の条件
スパゲティを食べるのにフォークとスプーンを使って食べる男、ソムリエでもないのにワインに詳しい男。それから1mgのメンソールのタバコを吸う男。こういう男が嫌いです。もう、はっきりしろと。男だったらスパゲティは片手で食べる。ワインなんか理屈じゃない、おいしければいいだろうと。たばこもどうせ吸うなら、きついのを吸う。
藤田晋さんの好きな麻雀
不平等なところからスタートするじゃないですか。配牌を見て、圧倒的に不利な牌ばかりなら、まさに「今に見てろよ!」となる。不平等なところからいかに早く、いかに大きく上がるかという点で、麻雀とビジネスはすごく似ていますね。
などなど、有名な経営者の個人的な「好き嫌い」にスポットを当てたお話は人間的で、非常に面白く読めました。
ただ、個人の好き嫌いについての対談が並んでいるだけですから、経営論に関して何か結論めいたものがある訳ではありません。
しかしながら、「良し悪し」に傾きがちな経営論ですが、「好き嫌い」で考えてみることも意外と意味のある切り口だなと思わせてくれますので、少しでもマネジメントに関わりのある方は読んでみるといいかもしれません。
てはまた…