根上生也『ピジョンの誘惑』〜論理力を鍛える70の扉〜
「鳩の巣原理」とは
001「鳩が10羽いるのに、巣が9個しかないならば、どこかの巣には 2羽の鳩が入ることになる」
これを「鳩の巣原理」と言います。「部屋割り論法」とか「引き出し原理」などと呼ばれることもあります。証明は必要ないでしょう。
(出典:Wikipedia)
『ピジョンの誘惑』について
本書は、このたった一つの原理だけを用いて(数式を使わずに)解ける問題を70個集めたものです。よくこれだけの種類の問題を集めたなと思いますが、逆に「鳩の巣原理」の応用範囲の広さに驚かされます。
- 作者: 根上生也
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2015/02/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ただ、初級編を除いて結構難しく、ほとんど自力では解けませんので、頭に汗をかきながら解説ページを読むのが本書の愉しみ方(?)です。
何を鳩と考えて、何を巣と思えばいいのか、そして何が重複するのか、と考えるのがポイントです。つまり、与えられた問題をいかにして「鳩の巣原理」に持ち込むか、が本書の問題を解く核心になります。分からなくても、解説文を読んでいるうちに自然と論理力が鍛えられるというのが著者の狙いです。たぶん。
例題
具体例がないと分からないでしょうから、70個の問題の中から、いくつか紹介します。初級編、中級編、上級編、特別編に分かれていますので、それぞれ一つずつ。
基本的には「鳩の巣原理」だけで解ける問題ですが、後半になると数学の用語や考え方を知らないと対処できないものも登場します。解答が気になる方はぜひ本書にあたっていただきたいと思います。
34番と50番は、本書の中で最も感動した問題です。
017「地球上には、髪の毛の本数が同じ人がいる」
034「6人以上の人が集まると、互いに知り合いの3人か、見ず知らずの3人がいる」
050「1から10までの自然数を環状に並べる。どのような順番で並べても、連続する3つの数で、その和が18以上になるところがある」
070「有界な実数の無限点列は収束する部分点列を含む」
最後の問題は、「ワイエルシュトラスの定理」と呼ばれていて、実数全体の集合の基本的な性質を示す命題だそうです。(もちろん、知らなくてもいい定理です)
「有界」とか専門用語の意味(説明しませんが実は簡単)さえ分かれば、この問題も「鳩の巣原理」一発で証明できるところが感動的です。
おわりに
いろんなネタの詰まった本はよくありますけど、本書のように、ここまで一つのテーマにこだわったパズル系の本は他にないと思います。頭の体操にいかがでしょうか。
ではまた…