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中島義道『私の嫌いな10の人びと』(新潮文庫)

以前読んだ中島義道『私の嫌いな10の言葉』がけっこう面白かったので、同じ著者の『私の嫌いな10の人びと』を読みました。 

私の嫌いな10の人びと (新潮文庫)

私の嫌いな10の人びと (新潮文庫)

中島氏は、電車のアナウンスや喋るATMなど、ありがた迷惑な騒音を良しとする日本社会に異議を申し立てたエッセイ『うるさい日本の私』により、「戦う哲学者」として知られています。

それだけではなく、親戚の冠婚葬祭にも出席しなかったりするなど、一般常識から外れた行動力に優れている人です。

しかし前回『私の嫌いな10の言葉』を読んだ限りでは、比較的共感できる部分も多いというか、全体としては賛同できる内容でした。他にも『対話のない社会』(PHP新書)でもそうでしたが、著者が一貫して主張しているのは、

  • 自分の頭で考えず、世間の考え方に無批判に従う怠惰な姿勢
  • 多数派の価値観を振りかざし、少数派の価値観を踏みにじる鈍感さ

が嫌いだということです。

本書は、中島氏が不愉快でたまらないと主張する「いい人」について、10のタイプの切り口から、日本的常識をバッサリと斬ったものです。

  1. 笑顔の絶えない人
  2. 常に感謝の気持ちを忘れない人
  3. みんなの喜ぶ顔が見たい人
  4. いつも前向きに生きている人
  5. 自分の仕事に「誇り」をもっている人
  6. 「けじめ」を大切にする人
  7. 喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
  8. 物事をはっきり言わない人
  9. 「おれ、バカだから」という人
  10. 「わが人生に悔いはない」と思っている人

この目次を見ても、「常に感謝の気持ちを忘れない」とか「いつも前向きに生きる」など、いったい何が不愉快なのかと思われるでしょうから、3章「みんなの喜ぶ顔が見たい人」での主張を引用します。

彼らは自分の望みがとても謙虚なものと思っている、という根本的錯覚に陥っておりながら、それに気づいていないからです。「みんなの喜ぶ顔が見たい」とは、なんと尊大な願望でしょうか! その願望は、結局は自分のまわりの環境を自分に好ましいように整えたいからであって、エゴイズムなのです。

こういう人は、自己利益をしたたかに求める功利主義者でもある。なぜなら、いかにも自分を押し殺し、どこまでも他人を、集団を立てるようなふりをしていますが、そうすることが評判しはじめざくざくと自己利益を呼ぶことを知っているからです。

著者の言う「私の嫌いな人」は、「エゴイストであって、それに気づいていない人」としてくくられるようです。なぜ気づかないかというと、日本の社会全体が、それを気付かなくさせるようなトーン(保護色?)をもっているからだそうです。

上記のように、内容は過激ですが、今回も特段嫌な気分になることもなく、読んでむしろうーん納得という感じがしました。(人それぞれ感じ方が違うと思いますので、鵜呑みにしない方がいいとは思いますが)

 


中島義道「私の嫌いな10の言葉」 - igawa's Blog

 

 

蛇足(本書を読んで知ったことなど)