igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

阿川佐和子『叱られる力』(文春新書)

地下街の小さな書店でふと手にとってみた阿川佐和子の『叱られる力』。
この年齢になっても会社ではよく叱られるので買ってしまいました。

 

叱られる力 聞く力 2 (文春新書)

叱られる力 聞く力 2 (文春新書)

 

 

阿川さんは、前著『聞く力』が売れたことで、取材を受けることが多くなったそうです。その際、いろんな方々と話しているうちに、今の時代の人々の心に関して浮かび上がってきた疑問が本書の出発点になっています。
それは、冒頭の「まえがきにかえて」で、次のように書かれています。

どうもみんな怖れている。見知らぬ人を。友達を。上司を。部下を。家族を。
面と向かうことを避け、話をすることに戸惑い、話を聞くことにも逡巡し、仲良くなりすぎることに警戒し、傷つきたくないと身を固め、でも一人になることには心底、恐怖を抱いている。まるで殻に閉じこもった動物が小さな穴から遠慮がちに外を覗いて、恐る恐る外界と接しているかのようです。
どうしてこういう事態になったのか。本当にこういうことになっているのか。 

 

前著のベストセラー『聞く力』の方が全体的な役立ち度は高い(万人向け)だと思いますが、本書はその人の経験によってヒットする部分は大きく異なるかもしれません。

さらっと読めてしまった本書ですが、主題とは関係ない話題に脱線することも多く、私が参考になった下記の3箇所も「叱られる」とは関係ないことでした。


正解を求めない

「だってね。答えがわからないうちが面白いんだ。せっかく夫婦で会話を楽しんでたのに、答えがわかっちゃったら、その時点でその話はおしまいですよ。ちっとも話が広がらなくなっちゃう」

なるほどなと思いました。つまり結論はどうでもいいのです。結論がどうであるかを探っている時間とその作業が大事なのです。ああだこうだ、そうじゃない、そうだろうと頭を巡らせて、ついでにそこから派生した関係のあることないことをいろいろ思い浮かべ、そこで新たな話に発展させていくことが楽しいのです。(p107)

妻との会話に限らず、会話の途中でiPhoneを取り出してすぐWikipediaで調べてしまっていたので、さっそく止めなければと思いました。
そもそも、他人の前では、携帯を取り出した時点でアウトですね。


余計な前置き

主要な用件の前に、ちょっとひと言、前置きをしてしまうことはよくあります。
「ずっとお話中だったので、遅くなりましたが」
「以前にもお伝えしたはずですが」
「すでにご理解していただいていると承知しておりましたのですが」
謙遜の体を装って、実は暗に相手を非難する言い回し。これを私は、すぐやりたがるんですね。(p212)

よく考えると、私もこれ、よくやってます。
相手の事情で伝えるのが遅くなったとき、前回伝えたことを再度話そうとするときなど、無意識で自分を守るために

「遅くなったのはあなたのせいだ」
「覚えていないのはあなたのせいだ」

というメッセージを発してしまっていることに気づかされました。
言いたくなる余計なひと言をぐっとこらえる力が必要です。


共感を表すオウム返し

妻の言葉に対して、ただ単に共感してあげるだけでいいのに、ついついアドバイスしたり解決策を示したりしてしまいます。共感を示す方法としては、オウム返しがいいと言われていますが、下記の事例は、さらにその上級編です。

「ねえ、聞いてくれる?私、三キロも太っちゃった」
「三キロ?そんなふうには見えないけど」
「そうなのよ。ちょっと本気で痩せないとダメよねえ」
「ダイエットかあ」
「うん。走り始めようかと思ってるの」
「お、ジョギング、いいじゃない」
(p233)

ただのオウム返しではありません。英語に直して繰り返すのがポイントです。こうすれば、さらに誠意をもって妻の話を聞いている夫を演じられるとのこと。

これは、TVタックルにゲスト出演された高濱さんという方のアイデアらしいのですが、名案だと思うので、さっそく使わせていただきます。

 

(補足)叱り上手、叱られ上手なるための10ヵ条

実は、本書のどこを探しても、「10ヵ条」という言葉はありません。本の帯の裏側に発見したのですが、編集者が勝手にまとめたものでしょう。参考になるかもしれませんので、以下に紹介しておきます。

  • 「私、人見知りなんです」は甘え
  • 酒場の本音を肝に銘じる
  • 「最悪経験」を尺度にする
  • 叱られるうちが花と思う
  • 叱るのは一回だけ
  • 「ステキ」を褒め言葉に変換する
  • 感情的にならない・理由を話す・他人と比べない
  • 「いつもそうなんだから」「あなたらしくない」は禁句
  • 「親は嫌われる動物と思え」
  • 最初に本性をさらけ出す

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蛇足

小学校1年か2年のときに国語の教科書に載っていた「きかんしゃやえもん」の作者「あがわひろゆき」さんは著者のお父さんなのですが、私の名前に限りなく近いので、小学校のときから勝手な親近感を覚えていました。 

きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)

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