江戸川乱歩『心理試験』
先日紹介した『二銭銅貨』に続き、江戸川乱歩短編集に収録されている『心理試験』を読みました。
江戸川乱歩のデビュー作ということもあって、『二銭銅貨』の方が評価が高いのですが、個人的にはこっちの方が数段面白いと思います。1985年版の文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』では日本篇の第25位にランクされている作品です。
- 作者: 江戸川乱歩,千葉俊二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/08/19
- メディア: 文庫
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タイトルになっている「心理試験」とは、簡単に言うと心理的な嘘発見器です。100ぐらいの単語からそれぞれ連想するものを容疑者に答えさせ、あわせて脈拍と反応時間を測定するものです。もちろん、単語の中には事件や犯行現場に関係する言葉を混ぜておきます。この事件では、「殺す」「松」「油紙」といった言葉がそれに当たります。普通の人が連想するような言葉を答えたつもりでも、事件に関わった者しか思いつかないような回答をしてしまうという罠に引っ掛けようという心理を使った捜査手法です。
このミステリーは倒叙形式になっていますので、犯人は最初からわかっています。犯人は、この心理試験に対しても周到な準備をしておいたため、容易に尻尾を出しません。困った刑事は、友人の探偵明智小五郎に助けてもらうことで解決に向かいます。
という、なかなか面白い小説です。
今年は、江戸川乱歩没後50年らしいので、短編集を読んでみてはいかがでしょうか。
ではまた。