igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

岡田尊司「愛着障害 子ども時代を引きずる人々」

なぜ人に気ばかり使ってしまうのか
なぜ自分をさらけ出すことに臆病になってしまうのか
なぜ人と交わることを心から楽しめないのか
なぜ本心を抑えてでも相手に合わせてしまうのか
なぜ拒否されたり傷つくことに敏感になってしまうのか

こういった悩みは、ほとんどの人に当てはまるのではないでしょうか。 

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)

 

人間が幸福に生きていくうえで、もっとも大切なもの---それは、安定した「愛着」であると著者はいいます。愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形作っているものです。人はそれぞれ特有の愛着スタイルをもっていて、どういう愛着スタイルをもつかによって、対人関係だけでなく仕事のしかたや生きる姿勢まで大きく左右されることになります。

従来、愛着の問題は、子供の問題、それも特殊で悲惨な家庭環境で育った子供の問題として扱われることが多かったのですが、近年は、一般の子供にも当てはまるだけでなく、大人にも広くみられる問題だと考えられるようになってきているそうです。
しかも、今日社会問題となっている様々な困難や障害に関わっていることが明らかになっています。例えば、うつや不安障害、アルコールや薬物依存症、境界性パーソナリティ障害過食症といった現代社会を特徴づける精神的なトラブルの多くは、愛着の問題がその要因やリスク要素になっており、また、離婚、家庭崩壊、虐待、非行といった様々な問題の背景の重要な要素としてもクローズアップされています。

 

本書では、愛着障害とはどういうものなのか、愛着障害が起こる要因や背景は何なのか、愛着障害をどうやって乗り越えていくのか、などについて、著名人での具体的な事例をあげながら丁寧に解説されています。

うつや不安障害、依存症など、従来の精神疾患の概念で捉えられている場合でも、通常の治療や対処では改善しにくいケースほど、愛着の問題が絡んでいることが多い、と著者は指摘します。これまでの治療がうまく機能してこなかったとすれば、愛着の視点が抜け落ちていたせいかもしれません。

 

愛着という概念を切り口に、現代社会の中に静かに横たわっている病に気づき、そこから抜け出す糸口を探る一冊です。

 

はじめに
第一章 愛着障害と愛着スタイル
第二章 愛着障害が生まれる要因と背景
第三章 愛着障害の特性と病理
第四章 愛着スタイルを見分ける
第五章 愛着スタイルと対人関係、仕事、愛情
第六章 愛着障害の克服
おわりに
愛着障害スタイル診断テスト