igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

重松清「流星ワゴン」

会社からリストラにあい、妻はテレクラで不倫を重ねたうえ離婚を持ち出され、息子は中学受験に失敗し家庭内暴力で、一家は崩壊寸前。主人公が生きる望みをなくして深夜の駅前のベンチに座っていたとき、オデッセイに乗った橋本父子に出会います。5年前の交通事故で亡くなったはずの橋本父子は、「たいせつな場所」へ連れて行くと言って、バック・トゥー・ザ・フューチャーのように主人公を過去へといざなっていく。。。

 

2002年度「本の雑誌」年間ベスト1の小説です。

 

状況は全く異なりますが、主人公がおかれた境遇に自分自身の家庭環境を重ね合わせてしまい、何というか非常に有意義な読書体験でした。取るに足らない小さなこと、その時は気にしてなかったことなどの積み重ねが現在の状況を作り出していますよね。もう過去には戻れない今、これからどうやって生きていくか(ちょっと大げさですが)、ヒントがもらえた気がします。

 

「分かれ道は、たくさんあるんです。でも、そのときにはなにも気づかない。みんな、そうですよね。気づかないまま、結果だけが、不意に目の前に突きつけられるんです」

ここ、おそらくうちの妻にも鋭く突き刺さる言葉です。

 

「してるんだよ! あんたにはそのつもりはないかもしれないけど、子どもにはそう聞こえるんだよ! 怖いんだよ! だから言いたいこと、なにも言えなくなっちゃうんだよ!」

主人公が父親に怒鳴ったこの言葉で、ハッと気がつきました。きっと子供たちから同じように思われているはず。。。

 

「負けてもいいんだ。ずうっと勝ちっぱなしの奴なんて、世界中どこにもいないんだから。みんな、勝ったり負けたりを繰り返しているんだ」

 長女にかけてあげたい言葉。この箇所で心がちょっぴり軽くなりました。

 

父親とは何か、家族とは何か、あらためて考えさせられます。

仮に過去へ戻ることができても、過去は変えることができない。「いま」の現実と向き合うしかありません。ハッピーエンドでも絶望で終わるわけでもない、一筋の希望の光がみえるような物語です。

 

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)