「よみうり堂」の書評から選んだ『国語と教育』
どちらかというと理系人間ですが、なぜかこの歳になって日本語とか文章術とか国語の話題にも興味があっていろんな本を読んでいます。 これまでも次のようなエントリーを書きました。
- 日本人の知性をゆがめた学校の読み方教育 - 読書のランダムウォーカー
- 外山滋比古『国語は好きですか』 - 読書のランダムウォーカー
- 国語と数学は、言葉と論理という意味で大事 - 読書のランダムウォーカー
ということで、今日はこの一冊。
柳田国男『国語と教育』(評:立教大教授・批評家 前田秀樹)
- 作者: 柳田国男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/05/22
- メディア: 単行本
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本書は、太平洋戦争のさなかから戦後の安定期に入る頃まで(1943年〜1961年)に発表された13編の講演録、談話、論考です。
全編を通じて柳田国男が訴えようとしているのは、結論だけ言えば口語の国語教育を徹底して重んぜよ、ということだそうです。
漢語が氾濫するわけのわからぬ書き言葉が、国語教育の中心に居座り、あたりまえの暮らしに生きる人々の言葉、「肺腑を突くように」心に沁みて通じる言葉は、学校の外にはじき出されたのである。その教育を引き受けるものが、ただ親兄弟の躾でしかないのだとしたら、どうしてそこから国語の豊かな共有が起こり得ようか。
柳田が悪しき文語の影響としてあげる例に、現在の読者は驚くだろう。漢語を乱用した何々「する」の動作表現、何々「的な」の形容語、何々「性」といった抽象名詞、これらはみな彼が憎むものだ。その憎しみと背中合わせに、学問の辛苦と詩人への魂がある。
ではまた…