推理小説における「ノックスの十戒」
いつも中身を読まずにゴミ箱行きになるセゾンの会員誌「express」ですが、表紙に書かれた「特集 名探偵登場」という文字に目が止まったので、めくってみました。
この特集記事は、ミステリー評論家 新保博久さんの監修で、冒頭次のような導入文で始まります。
かつて推理小説は、探偵小説と呼ばれていた。かようにそれらは探偵たちの独壇場であったのだ、むろん今もなお! デュパン、ホームズ、そして明智…。江戸川乱歩生誕120周年によせて贈る、愛すべき名探偵たちへのオマージュ。
計24ページにわたる特集の内容は、こんな感じ。
特集の中に、「ノックスの十戒とは?」という1ページのコラムがあって、一応ミステリーファンなのに知らなかったので、「ノックスの十戒」をメモしておきます。
- 犯人は物語の早い段階で言及される人物でなければならない。ただし、読者が思考を追うことを許されている人物であってはならない。
- 当然ながら、超自然的要素や魔術的要素を物語に持ち込んではならない。
- 秘密の部屋、秘密の通路は、一つに限り許される。ついでにいえば、そのような構造が予想される屋敷が舞台になるのでなければ、秘密の通路を持ち込むべきではない。
- これまでに発見されていない毒物や、結末で長大な科学的説明が必要とされる小道具は使ってはいけない。
- 中国人を重要な役で登場させてはいけない。
- 探偵は偶然に助けられてはいけない。説明のできない直感に頼って真相をつかむことも許されない。
- 探偵その人が罪を犯してはいけない。
- 探偵が手がかりをつかんだときには、即座に読者もそれを検討できるようにしなければならない。
- 探偵の愚かな友人であるワトスン役は、自分の頭に浮かぶ思考を隠してはいけない。その知性は、わずかだけ、ごくわずかだけ、平均的な読者の知性を下回っていなければならない。
- 双子の兄弟など、誰かと瓜二つの人物は、その出現を自然に予想できる場合を除いて登場させるべきではない。
このような「べからず集」がミステリーには何種類かあるけれども、こういったタブーを破って名作となっている小説も少なくはないようです。
あの有名なアガサ・クリスティの「アクロイド殺人事件」も、そんなのありか!と思いましたが、ノックスの十戒を破っている訳ではないですね。(知らない方はすみません)
第5条の「 中国人を重要な役で登場させてはいけない。」が意味不明ですが、このコラムでは、十戒といいつつ一種のジョークであることを示すためではないかと推測しています。Wikipediaでは、
「中国人」とは、言語や文化が余りにも違う外国人、という意味である
と説明されていました。
…とこのエントリーを書いてみましたが、この情報誌はAmazonとかで入手できる訳ではありませんので、本特集を読まれたい方がいらっしゃいましたら、私は不要ですのでお譲りします。(h.igawa@Gメールまで)
- 作者: アガサクリスティ,Agatha Christie,大久保康雄
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/03
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