マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』(新潮文庫)
『トム・ソーヤーの冒険』を読みました。
児童文学の名作として有名な、みなさんご存知のあのトム・ソーヤです。
一般には子供向けの物語として知られている本書をなぜ読んだのかというと、うちの子の夏休みの読書感想文を書いてあげるためです。
というのは、もちろん冗談です。
続編『ハックルベリー・フィンの冒険』を読むのが目的なのですが、そのためには、正編であるトム・ソーヤを読んでおきたかったからです。(お恥ずかしながら読んだことがありませんでした)
ハックルベリーも同様に児童文学でもあるのですが、実は、『ハックルベリー・フィンの冒険』という小説は、アメリカ文学史において特別な存在として位置づけられていることを最近知りました。
ヘミングウェイは「あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊の本から出発している。」と言ったそうです。
また、芥川賞作家池澤夏樹さんは、『世界文学を読みほどく』において、十大傑作の一つとしてハックルベリーを取り上げています。
ということで、主人公のトム・ソーヤよりもハックルベリーの存在が気になりながら読み始めました。もちろん、ハックルベリーは脇役なので、登場場面は多くありません。
作者マーク・トウェインは、ハックルベリーを次のような描写で登場させます。
間もなくトムは、村の除け者ハックルベリー・フィンに出会った。
村一番の酒飲みの息子ハックルベリーは、村じゅうの母親から心底嫌われ、恐れられていた。何しろ怠け者で、無法者で、品のない不良ときている。しかも子供たちはみなハックルベリーを崇めて、つき合っては駄目と言われているのに彼と過ごすのが楽しくて仕方なく、自分もハックみたいになれたらと願っていた。その華々しい浮浪者の身を羨む点ではトムもほかのきちんとした子たちと変わらず、あの子と遊んではいけないときつく言い渡されている点も同じだった。
現代日本では、全国を探し回ってもほぼ見つからないでしょう。
最後にちょっとだけ感想。
これまで、子供向けだと思って手に取ることはありませんでしたし、正直、単なる冒険ものだと軽視しておりました。
『〜の冒険』というタイトルですから、てっきり、いかだに乗ったりして大自然の中を駆け回るというような「冒険」を想像していました。
川、森、墓地、洞窟などでの場面は出てきますが、全体としては、友達や家族との日常生活の中に「冒険」的な要素が入っているという印象でした。
私の先入観に対して、いい意味で裏切られたのですが、児童向けにしておくのはもったいないような気がしました。絶対おすすめというほどではありませんが。
しかしながら、大人でも十分楽しめるストーリーでしたので、次のハックルベリーが楽しみです。
トム・ソーヤは多くの翻訳版が存在しますが、今回読んだのは柴田元幸さんが訳した新潮文庫版です。他の訳と比較したわけではありませんが、柴田さんの訳は自然で非常に読みやすいものでした。
さっそく、同じ柴田さんの訳でハックルベリーを読みたいと思ったのですが、残念ながら存在しないようです。トム・ソーヤと同様に、何種類も翻訳が出ているので、どれを読むか、これから考えます。
- 作者: マーク・トウェイン,Mark Twain,村岡花子
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ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)
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