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谷島宣之『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』


日経コンピュータ編集長の谷島宣之さんが書いた『ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国』を読みました。「経営と技術」から見た近代化の諸問題、という大層な副題がついています。 

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

システム開発の世界で、ものごとに大きな影響を与える事実なのに案外知られていないことがあります。その一つが、システム開発費の投資先とシステム開発技術者の所属先に関することです。

  • 日本企業は自社で利用するソフトのほとんどをIT(情報技術)企業に開発させているのに対し、米国企業はソフトを内製する比率が高い
  • 日本のソフト開発技術者の大半はIT企業に所属するが、米国のソフト開発技術者の大半はIT企業ではなく一般企業に所属している。(p10)

上の二つの文は実質的に同じことを言っています。日本企業は社内にシステム開発技術者を抱えずソフト開発をIT企業に外注していますが、米国企業は社内に抱えているシステム開発技術者で内製しています。まさに、本書タイトルのとおり、「ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国」なんです。

アウトソーシング化が進む米国企業の方が外注しているんではないかと思われがちですが、システム開発に関しては実態は逆です。

 

実績ある米国手法を取り入れたのにうまくいかない、という事例がよく報告されていますが、その原因の一つはこの誤解によるものです。
例えば、米国生まれのプロジェクトマネジメントは、プロジェクトマネージャが発注者側にいることが前提になっていますが、受注者側にプロジェクトマネージャがいる場合が多い日本では、そのまま適用してもうまくいかないのは明らかです。


本書の主題は、「近代化に伴う適応異常とその対策」です。この主題を考えるための題材として、日本企業がITを進める際に生じている上記のような混乱が冒頭に取り上げられています。

欧米の手法が正しいことを主張している訳ではなく、欧米の考え方や手法を取り入れたときの問題と対策を考える際に役立つことが書かれています。


コンピュータ関係者だけではなく、一般のビジネスマンに広くオススメできる本です。

 

 


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