庄野潤三の短編小説『静物』
村上春樹のエッセイ『若い読者のための短編小説案内』で解説されている短編の一つ、庄野潤三の『静物』を読みました。(新潮文庫『プールサイド小景・静物』に収録)
- 作者: 庄野潤三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1965/03/01
- メディア: 文庫
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庄野潤三という作家はどんな作風なのか、どんな作品を残しているのか、まったく予備知識はありません。読んでみた感じは、たんたんと静かに日常生活が語られていき、何か大きな出来事が起こるわけでもなく、基本的に夫婦と子どもの会話だけで進行していきます。
わたしにとって、小島信夫の奇妙な短編『馬』とは違う意味で、わけわからない小説でした。
ところが、村上春樹は『若い読者の〜』で、こう評しています。
「静物」はきわめて興味深く、またすぐれた作品です。文学史の中にきらりと残る作品です。僕はそう思う。そして庄野潤三の作品のどれかひとつ取り上げるとしたら、なんのかんの言ってもやっぱりこの作品しかないと思います。
しかしいずれにせよ庄野潤三は、おそらくはこの「静物」という短編小説をひとつ書いただけで、文学史に残る作家であり続けることでしょう。それだけの力を持った作品です。
静かに絶賛しています。また、「小説を書くこと」に関する村上春樹の深い分析内容にも納得したのですが、わたしにはここで説明できる力がありませんので割愛させていただきます。
ところで、『若い読者の〜』を読んではじめて、『静物』には、ある出来事が明示的に描かれていないことを知りました。そんな重大な事実に気づいた人と気づかない人とでは、この短編の読後感がまったく違うはずです。全然気づきませんでした。実は、それを知って二度目を読んだのですが、それでもいまいちピンときていませんので、今度3度目を読むつもりです。
そしてまた実際にお読みになっていただければわかるように、「静物」は多くの奇妙な謎に満ちた作品でもあります。一度や二度ざっと読んだくらいでは、なかなか全貌が見えてこない。読んでいて「なんでこんなことが?」とか「一体これはなんなんだ?」と首をひねらされるところがたくさんがあります。
村上春樹は、このようにも書いていますので、鈍感なわたしがピンとこないのも、悔しいけど当然なのかもしれません。
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ではまた…
- 作者: 村上春樹
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