「目的」は注意深く明文化することが大事
チームや組織にとって「目的」がもっとも重要であるとよく言われます。頭では分かっているつもりでも、その本質が分かっていなかったことに気がつきました。
東日本大震災での二つのボランティア組織の話です。仮に、組織Aと組織Bとしておきます。組織Aの目的が「被災された方々が自立した生活を取り戻すサポートをすること」に対して、組織Bの目的は「被災者支援」。
ほぼ同じことを言っているようでもありますが、実は大きく違う結果をもたらします。組織Aの方が具体的でいいというような単純な話でもありません。
「被災者支援」が目的だとすると、支援すればするほどいいということになり、ややもすると過剰支援になってしまい、支援に依存する被災者を生み出す可能性があります。また、支援者もやりがいがあるだけに、「支援者がいなくなったら困る」という本末転倒が起こり、支援活動に依存する人が出てくる危険性もあります。
また現実には、こんなことがあったそうです。
家電品について、組織Bでは仮設住居に入居した被災者に対しては支援したけど、被災した自宅に戻った人には行わなかった、つまり人ではなく場所に支援したのです。実際は、冷蔵庫や洗濯機といった生活必需品は一階に置いていたため、ほぼ津波で流されていて、自宅に戻った人も仮設住居の被災者と同様、非常に困っていたのです。このため組織Aは、組織B(実は大手の支援団体)の支援を受けられない個人避難宅に家電品を支援したのだそうです。
大手の組織Bが組織Aと同様に「被災された方々が自立した生活を取り戻すサポートをすること」という目的を掲げ、その目的を達成するための施策を忠実に行う組織であったなら、自宅に戻った人はもちろん、被災地から出て全国に避難した人にまでそうした支援を行い、さらに多くの人々を助けられたかもしれません。
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目的というものは、すべての判断の起点となるため、末尾に至るまで注意深く明文化しておく必要があることを痛感しました。
ではまた…