小川晃通『アカマイ 〜知られざるインターネットの巨人〜』
アカマイという会社をご存知でしょうか?
一般になじみのない企業ですが、インターネットを使っている人であれば、ほとんどの人が気づかないままアカマイのサービスを利用しています。スマホを使っている人やFacebookやTwitter等のソーシャルメディアを利用している人なら、まず間違いなくアカマイのサービスを利用しているんだそうです。
これを読んでいる方でGoogleを知らない人はいないと思いますが、Googleはインターネットの世界をある意味牛耳っていますよね。その一方で、アカマイという会社はインターネットの利用者には見えない裏の世界の支配者だと言えるかもしれません。
アカマイのビジネスを紹介した本を読みました。
アカマイ 知られざるインターネットの巨人 (角川EPUB選書)
- 作者: 小川晃通
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2014/08/11
- メディア: Kindle版
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超シンプルに言ってしまうと、同社は
顧客のデータをインターネット上で迅速に配信することに特化した多国籍企業
です。(現在では、大規模なデータ配信のために構築した仕組みから派生した事業として、高速化やセキュリティにもシフトしている)
いま、アカマイは92ヶ国に15万台のサーバーを配置しています。(2014年7月現在)
世界中にサーバーを分散配置し、各ユーザーが最寄りのサーバーからデータを受け取れるように誘導することで、サーバーにかかる負荷を分散すると同時に各ユーザーが迅速にデータを受け取れるようにするのが、アカマイの本来のビジネスです。
インターネットを利用するために、通常OCN、BIGLOBE、niftyなどのインターネットプロバイダーに接続していると思います。例えば、Yahooのコンテンツにアクセスする際に、Yahooのコンテンツが契約しているプロバイダー内のサーバーに存在すれば、遠いアメリカのサーバーにアクセスするよりはレスポンスが速いはずです。このように、アカマイは顧客データを世界中のインターネットプロバイダーなどユーザーの近くのサーバーに置くことで、顧客企業は自社サーバーへのアクセス負荷を軽減することができ、利用者は迅速にデータにアクセスすることができる、というビジネスモデルです。
実は、アカマイは自力で巨大な設備を世界中に構築しているわけではありません。インターネットプロバイダーなどが運用管理しているネットワーク内にアカマイのサーバーを配置することによって、世界的なコンテンツ配信網を整備しているのだそうです。世界中のさまざまな組織がアカマイのビジネスに協力をしていると言えます。
現在では、協力するというより、協力せざるを得ない状況になっていると言えるようです。ではなぜ、そのようなアカマイが有利な状況になったのでしょうか?
その答えは本書にゆずることとします。
本書は技術者向けではなく、普通にインターネットを使う程度の一般ユーザー向けに書かれてはいますが、やはり技術の話を避けて通るわけにはいかず、一部には登場します。しかし逆に、インターネットを利用するうえでは、これぐらいの初歩的知識があった方がネットライフが楽しめるでしょう。
インターネットの裏側の仕組みと力関係(お金の流れ)が面白いほどよく分かりますので、多くの方にオススメできる本です。