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加藤陽子「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」

雑誌の読書特集やレビューサイトなど、いろんな所で紹介されていて気になっていた、「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」を読みました。 

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

 

本書は、日本近現代史を専門とする東大の先生が、日清戦争から太平洋戦争に至る時代の戦争の論理などについて、中高生を相手にした5日間の講義録です。

まず、本書のテーマについて、少し長いですが「はじめに」から引用します。

以前「戦争の日本近現代史」(講談社現代新書)という本を書いたとき、日清戦争から太平洋戦争まで十年ごとに大きな戦争をやってきたような国家である日本にとって、戦争を国民に説得するための正当化の論理にはいかなるものがあったのか、それをひとまず正確に取りだしてみようとの目論見がありました。もし自分がその当時生きていたら、そのような説得の論理に騙されただろうか、どうも騙されてしまいそうだ、との疑念があったからです。

今回の講義では、扱った対象こそ同じですがいま少し視野を広くとり、たとえば序章では、 (1)9.11テロ後のアメリカと日中戦争期の日本に共通する対外認識とはなにか、(2)膨大な戦死傷者を出した戦争の後に国家が新たな社会契約を必要とするのはなぜか、(3)戦争は敵対する国家の憲法や社会を成立させている基本原理に対する攻撃というかたちをとるとルソーは述べたが、それでは太平洋戦争の結果書きかえられた日本の基本原理とはなんだったのか、などの論点を考えてみました。戦争というものの根源的な特徴を抽出してみたかったのです。

つまるところ時々の戦争は、国際関係、地域秩序、当該国家や社会に対していかなる影響を及ぼしたのか、また時々の戦争の前と後でいかなる変化が起きたのか、本書のテーマはここにあります。

目次はこのようになっています。

序章 日本近現代史を考える
1章 日清戦争「侵略・被侵略」では見えてこないもの
2章 日露戦争 朝鮮か満州か、それが問題
3章 第一次世界大戦 日本が抱いた主観的な挫折
4章 満州事変日中戦争 日本切腹、中国介錯
5章 太平洋戦争 戦死者の死に場所を教えられなかった国 

私は、高校生のとき日本史・世界史を選択しなかった上に、いままで歴史に関してあまり好奇心がなかったので、この辺の知識は非常に疎く、「1894年、日清戦争」など“年と出来事”だけの断片的な知識しか持ち合わせていませんでした。

しかしながら、本書は中高生向けの講義であることに加え、当時の関係者の立場だったらどのように考えるか、どのように行動するかという問いをベースに語りかけられているため、その時代の空気の中で話を聞いている感覚(大げさですが)があり、非常に理解しやすい内容でした。

また、ところどころに、理解を助けるためのイラストが描かれているんですが、このやわらかなタッチの絵は、なかなかいい感じに本書の魅力になっている気がします。

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少なくとも高校時代に日本史を勉強した人の方がより楽しめると思いますが、あまり詳しくない私の場合は知らないことも多かったので、「なるほど、そういう意図があったのか!」とか「○○は、△△が原因だったのか!」とか、ほとんどの内容が新鮮で楽しく読めました。また、全体を通して、戦争というものがいかに経済上の都合で行われてきたかということも納得できました。

 

このように、本編である1章から5章の内容は、もちろん大変面白いのですが、私にとっては、歴史を考えることの面白さを教えてくれる序章だけでも読んだ価値があったと思います。

序章では、1930年代の日本と現代のアメリカ、1930年代のアメリカと1945年頃の日本、にはそれぞれ「戦争のかたち」、「戦後の基本的な社会秩序の変化」に「意外な共通点」があるということが明らかにされます。

この共通性に気づけるかどうかということが、「歴史的なものの見方ができるかどうか」ということなのだそうです。

では、どうしたら、歴史的なものの見方ができるようになるのでしょうか? それは序章の後半に論じられていますが、大変面白いので読んでいただきたいと思います。

 

自分の頭で考えてみることの大切や、歴史に対する好奇心を増やしてくれたという意味で、いい本にめぐりあえたと思います。

本書を十分に楽しむには予備知識がなさすぎたことが悔しいですので、もう少しこの時代が理解できるようになった頃、ぜひ読み返したいものです。

 

 (関連書籍)

戦争の日本近現代史 (講談社現代新書)

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