リチャード・コッチ「人生を変える80対20の法則」
十数年ぶりに「80対20の法則」の本を読みました。
- 作者: リチャードコッチ,仁平和夫
- 出版社/メーカー: 阪急コミュニケーションズ
- 発売日: 1998/05/01
- メディア: 単行本
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80対20の法則は、あらゆる人、あらゆる組織、あらゆる団体、あらゆる形態の社会が、毎日の生活や仕事の中で利用することができ、また利用すべきものである。この法則を知っていれば、いままでよりはるかに少ない努力で、いままでよりはるかに大きな成果を上げることができる。個人の場合は、生活が豊かになり、生きる喜びが増す。企業や組織の場合は、利益が増え、効率性が上がる。(プロローグより)
「パレートの法則」という名前でも有名なこの法則は、簡単に言うと「インプットとアウトプットは比例しない」ということです。この法則を前提に「大事なことだけに集中すれば大半の問題は解決するので、仕事でも日常生活でも楽をしましょうよ」というのが著者のメッセージです。
本書では、第1部で「80対20の法則」の定義とその活用法を紹介し、第2部・第3部でそれぞれビジネス篇・生活篇として、企業の成功に奇跡は必要でないこと、楽をしながら生活を豊かにすることができることが書かれています。
80対20の法則とは何か
80対20の法則とは、冒頭の説明を少し正確に表現すると「インプットのわずかな部分が、アウトプットの大きな部分をもたらす」という法則です。
例えば、なしとげる成果の80%は、費やした時間の20%から生まれる。逆に言うと、費やした時間の80%は、わずか20%の成果しか生まないということです。
ビジネスの世界では、売上げの80%を占めているのは20%の製品、20%の顧客であり、社会では、犯罪の80%を20%の犯罪者が占めており、交通事故の80%を20%のドライバーが占めています。パソコンの例で言うと、使う時間の80%が全機能の20%に集中しています。
80対20の法則がなぜ重要なのか
80対20の法則が重要なのは、社会通念に反しているからです。普通、努力と成果は釣り合っていて、会社では、どの消費者も、どの従業員も、どの製品も等しく重要だど考えられています。そう考えるのが自然であり民主的なようですが、実際は、ほとんどの場合大きな不均衡が存在します。
ですので、80対20の法則をうまく活かせば、何もかも驚くほど改善することができます。今までより少ない努力で、少ない経費で、少ない投資で、今までよりも多くのものを得られることになります。つまり、個人なら毎日の生活が楽しくなり、企業なら収益性がはるかに向上し、政府なら国民生活をもっと豊かにできるようになります。
第2部・第3部では数多くの活用方法が書かれていますが、特になるほど!と思った箇所を二つ紹介します。
シンプル・イズ・ビューティフル(p95)
「規模の経済」の理論では、会社が大きくなるほど、売上げが増えるほど採算性が向上するはずですが、現実には、売上げを伸ばしながらも利益率は落ちている企業が多く存在します。なぜこんなことが起こるかというと、その理由は複雑化のコストです。
他の条件がすべて同じだとすれば、「スモール・イズ・ビューティフル」ではなく「ビッグ・イズ・ビューティフル」です。そうでなければ、複雑になる分だけ、大きいことには無駄が多くなります。しかし、大小に関わりなく「シンプル」であることは常に「ビューティフル」です。そのためには、80対20の法則を企業の製品や顧客に適用することが大事なのですが、人間というものは細かいことに口出ししたり、形式だけの手続きを増やしたりするなど単純化よりも複雑化を好むようです。
Apple社のスティーブ・ジョブズが肥大化していたMacintoshの製品カテゴリーを、(プロ向けor消費者向け)×(デスクトップorノートブック)の4つに集約したのはまさにシンプル・イズ・ビューティフルの事例だと思います。
プロジェクト管理(p143)
私はシステム開発などいろんなプロジェクトに携わってきたのですが、うまくいったという事例は多くありません。理由はさまざまですが、この本を読んで二つのヒントをもらいました。
一つは、目的を単純化すること。
どんなプロジェクトでも、価値の80%は、20%の仕事から生まれる。残りの80%の仕事は、プロジェクトが不必要に複雑になったためにできた仕事である。したがって、たった一つの目標が明確に決まるまで、プロジェクトに着手してはいけない。不要な荷物はどんどん捨てなければいけない。
もう一つは、設計で勝負はあらかた決まること。
設計段階で発生する問題の20%が、コストや予算超過の80%を占める。設計段階で発生する重要な問題の80%は、あとから修正しようとすれば莫大なコストがかかり、一から作り直さなければならないケースも出てくる。
おわりに
この法則は、理解している人も少なく、たとえ理解していたとしても、一般常識というか周りの空気の影響を受けて なかなか実践しにくいのではないかと思います。だからこそ逆に、この法則を意識して仕事に家庭生活に取り組むことは いろんな意味でチャンスだとも言えるのではないでしょうか。
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