igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

中野信子「脳内麻薬」

本屋さんで偶然見つけた本です。

「人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体」というサブタイトルが面白そうだったので、買ってしまいました。

本当は、本の帯にある著者の写真が美人だったことと、「あなたは『気持ちよさ』について何も知らない」というキャッチを見て、ドーパミンが大量に出た影響で買ってしまったのかもしれません。

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ところで、「快楽」とはどういうものでしょうか。

  • 食欲や性欲など生物的な欲求を満たすことで得られる「快楽」
  • アルコールやタバコなど特定の物質を摂取することにより得られる「快楽」
  • 買い物・ギャンブル・コンピュータゲーム・SNSなど趣味的なものにハマる「快楽」

これらは、私たちが人生の目的を達成する妨げとなる存在であると考えられていると思います。ところが、この両者(人生の目的のために真摯に努力すること、快楽に我を忘れること)には、同じ脳内物質がかかわっています。

何かを成し遂げ社会的に評価されて喜びを感じるときや、友人や恋人から感謝やお祝いの言葉を聞いて幸福感に包まれるとき、快楽をもたらす物質「ドーパミン」が大量に分泌されます。このドーパミンは、食事やセックスなど生物的な快楽を脳が感じるときや、ギャンブルやゲームで我を忘れているときに分泌されている物質とまったく同じなんだそうです。これは一体どういうことなのでしょうか?

それは、人間という生き物だけが、遠い将来のことを見据えて作物を育てたり、街や国を作ったり、何の役に立つのか分からない科学や芸術といったようなことに力を注いでいることと大きく関わっています。こうした知能的な行動は「目の前の餌を食べたい」という生物的欲求と時にはぶつかり合うので、その葛藤を克服するために快楽物質という「ご褒美」を用意したのではないかと考えられています。

快楽とは、ヒトが目的を達成するための妨げになるものではなく、給料や昇進という報酬がなかった原始時代から、ヒトの脳が用意した「頑張っている自分へのご褒美」なのです。

このご褒美が人間に備わったのは素晴らしいことなのですが、生理的な欲求を打ち負かすほど非常に強力なので、ひとつ間違うとご褒美だけ求めるようになります。これが実は、依存症や薬物中毒なんです。

本書は、この「快楽という自分へのご褒美」と、その源になっている化学物質(脳内麻薬)の働きについて、さまざまな事例を交えて解説されています。

ドーパミンが作用する快楽の仕組みを知ることで、それをコントロールする技術を学ぶことができますので、「ついついアレにハマってしまう」という方にはオススメです。