中村仁一「大往生したけりゃ医療とかかわるな」幻冬舎新書
まず内容に入る前に・・・
「大往生」という言葉の意味を間違えていました。
何となく、社会的に偉い立場の人や正義のヒーローが立派な死に方をしたときのことだとイメージしていました。単に「安らかに死ぬこと」だったとは知りませんでした。お恥ずかしい。
本書は、特別養護老人ホームの医師が書いた現在50万部を超えているベストセラーです。背表紙に書かれている内容を引用しておきます。
3人に1人はがんで死ぬといわれているが、医者の手にかからずに死ねる人はごくわずか。中でもがんは治療をしなければ痛まないのに医者や家族に治療を勧められ、拷問のような苦しみを味わった挙句、やっと息を引きとれる人が大半だ。現役医師である著者の持論は、「死ぬのはがんに限る」。実際に最後まで点滴注射も酸素吸入もいっさいしない数百例の「自然死」を見届けてきた。なぜ子孫を残す役目を終えたら、「がん死」がお勧めなのか。自分の死に時を自分で決めることを提案した、画期的な書。
あの「ちきりん」さんも先月ブログで紹介されていました。
医療って何なのか、ちょっとは知っておきましょう - Chikirinの日記
それから実は、本書の内容(抜粋)は 下記のサイトで読むことができます。概略が分かればいいなら、本を買う必要はないかもしれません。
大往生したけりゃ医療とかかわるな(1):医者は病気のことなら何でも分かる――そう思っていませんか? (1/3) - Business Media 誠
著者の言いたいことは なるほどそうだなあと思えましたが、すでに数多くの書評が書かれていますので、私が今さらこの本についてのコメントをしても大した意味がないと思います。しかしながら、エントリーとして簡単に残しておくことにします。
はじめは、変な医者が書いた よくある「トンデモ治療」の類いかもしれないと思いながら読みました。でも意外とまともな本でした。「大往生したけりゃ医療とかかわるな」というタイトルですが、実際は「高齢者に過剰な検査や延命治療はいらない!」という内容です。
本書は、著者の考える「医療の鉄則」からスタートします。
一、死にゆく自然の過程を邪魔しない
一、死にゆく人間に無用の苦痛を与えてはならない
現代の医療においては、
「できるだけ手を尽くす」が「できる限り苦しめて、たっぷり地獄を味わわせる」とほぼ同義になっているといっても、言い過ぎではない状況を呈しています。
と著者は批判しています。
しかし、あくまでも高齢者を前提に考えると、それほどではなく、著者の「医療の鉄則」は守られているのではないかと思います。
その他、がんの完全放置、生活習慣病は治らないこと、「自分の死を考える集い」など興味深い内容が続きますが、この辺でやめておきます。