igawa's Blog

おもに読書と本に関するブログですが、Mac/iPhone、数学、音楽の話題など例外の方が多いかもしれません。

谷岡一郎「ツキの法則」

ギャンブルに必勝法はあるのでしょうか? ツキを呼ぶ方法はあるのでしょうか?

ギャンブルで大負けしない方法

世の中にはいかにも科学っぽい顔をしたインチキな必勝法が出回っていて、多くの人が間違った道に誘い込まれ、お金を浪費させられています。「絶対当たる!」というインチキ必勝法を売っている人たちは、故意に人をだましているサギの確信犯です。

もちろん残念ながら、ギャンブルに必勝法はありません。世の中に数多ある必勝法と言われているものの中に本物の必勝法があれば、ギャンブル産業は確実に崩壊するはずですが、過去数世紀そうであったように今のところも健在です。

 

これだけだと、話は終わってしまうのですが、実は「確実に勝つ方法」はなくても「確実に負ける方法」なら分かっています。逆に言うと「大負けしない方法」というものはあって、しかもそれはギャンブル本来のスリル(興奮)や楽しさを損なうことのない方法です。

そんな方法が本当にあるのか!?と思われそうですが、私も確率論(のようなもの)を学生時代に専攻していたので、著者の主張がウソではないことは私の保証付きです。

ギャンブルを<大負けすることなく>楽しむ方法論を知ることは、「何かに賭ける」というあらゆるギャンブル的場面(ビジネスや恋愛?)でも応用できるというメリットもあります。

その方法論を、著者は「はじめに」でいきなり明かしています。

本書の目的は、「ツキ」の正体を解き明かすこと、そして、ギャンブルにおいて<最小限の投入金額>で<最大限の心理的効用(満足感)>をもたらすためのノウハウを学ぶことである。そのプロセスにおいて「どんなにツキが味方しても決して勝てない」賭け方を説明する。つまり、それが「確実に負ける賭け方」である。

「確実に負ける賭け方」とは、やや専門的に言えば、「分散を小さくして、できるだけ大数の法則の効果の顕在化を促進する」ことであるが、これでは何のことか分からないと思う。そこで本書ではこれから先、身近な具体例を多く盛り込み、統計学に馴染みがなくても理解できるように解説していくことにする。 

「分散」とか「大数の法則」とか、専門用語が出てきて難しそうに思えますが、本書を読めばその意味は日常的な感覚として理解できることなので心配いりません。「確実に負ける賭け方」とは、要は、

  • 「回数」を増やすこと
  • 「同じ金額」を賭け続けること
  • 「本命」狙いに徹すること

ということです。なぜそうなるのかは余白が足りないので説明を省略させていただきます。

「ツキ」とは何か 

次に「ツキ」の正体について、少しだけネタバレしたいと思います。

ツキの正体は、統計学上の「必然的な偏り(ゆらぎ)」にすぎず、そのゆらぎは存在しない方がおかしい。必ず存在するのである。そして、「ツキの流れ」や「ツキ」それ自体も、既に起こった出来事を振り返って名付けた呼び名にすぎない。つまり、過去のその時点では、「ツキ」や「ツキの流れ」の実体はないのである。そして未来に関しては純然たる確率論以外の予測は不可能なのである。

例えば、1024(2の10乗)人でじゃんけんを行い、勝った人は勝った人と、負けた人は負けた人と勝ち抜き戦(負け抜き戦)を行うと、10連勝する人と10連敗する人が必ず1人います。

10連勝した人はツイているのでしょうか? 10連勝したその人にとっては、簡単には起こらなさそうでツイているように感じますが、客観的にみれば誰かに絶対起こる事象です。

つまり、主観的には(ある人にとっては)めったに起こらないけれども、客観的には(誰かに)絶対に起こる事象、実はこれが「ツキ」の正体なんです。

 

ツキの法則―「賭け方」と「勝敗」の科学 (PHP新書)

ツキの法則―「賭け方」と「勝敗」の科学 (PHP新書)

 

図解本もあるようです。 

図解 ツキの法則

図解 ツキの法則

 

 

(補足) 

先日(2014.3.6)のエントリーで「統計学が最強の学問である」について書いたとき、「ギャンブルの科学」が分かる本として本書「ツキの法則」を紹介しました。

 西内啓「統計学が最強の学問である」 - igawa's Blog

2010年頃に読んだ「ツキの法則」を久しぶりに読んでみて、やっぱりこういう確率・統計的知識は常識として知っておくべきと思ったので、今回の記事を書きました。