プレゼンで どんな質問にも対応できる方法
「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」(カーマイン・ガロ著、日経BP社)を読みました。再読です。
- 作者: カーマイン・ガロ,外村仁解説,井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2010/07/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書は、スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを分析し、聴衆を魅了するテクニックの数々を明らかにしたものです。紹介されている18の法則は簡単に理解できるシンプルなものですので、誰にでも身につけることができると思います。ジョブズのように「めちゃくちゃすごい」プレゼンテーションができるようになるには、もちろん念入りな準備と練習が必要でしょうけど。
ジョブズはプレゼンで、3幕構成の演劇という形を好んで使っていましたが、本書も3幕構成で述べられています。
- 第1幕「ストーリーを作る」:自信をもって聴衆を引きつけるためのストーリーの具体的な作り方
- 第2幕「体験を提供する」:ビジュアルとして魅力があり、「買わなきゃ」と思ってしまう体験を生み出すヒント
- 第3幕「仕上げと練習」:身体の使い方やしゃべり方など、自然に話しているかのように聴かせる方法
あらためて読んでみて、2番目の法則「一番大事な問いに答える」(プレゼンの対象である聞き手の「なぜ」に答えてあげる)など、基本的だけどおろそかにしがちなポイントについて多数気づかされました。
しかし今回の再読で、最も「なるほどー!」と思ったのは、15番目の法則「簡単そうに見せる」の中に書かれている「どんな質問にも対応できる方法」。
これは、筆者が「バケツ方式」と読んでいるテクニックで、CEOや政治家がなにがしかの形で使っている方式だそうです。もちろん、スティーブ・ジョブズも使っていて、プレゼン、発表、営業など、厳しい質問や微妙な質問が予想される場合は必須だと思います。バケツ方式とは、こんな方法です。
- 訪ねられる可能性が高い質問をリストアップする。
- 想定した質問を「バケツ」に入れる。
「バケツ」とは、入れ物となるカテゴリーのことで、7種類も用意すれば、ほとんどの質問をどれかのカテゴリーに分類できるはず。これにより、回答を用意すべき質問の数を最大7つまで減らすことができます。 - カテゴリーに対するベストな回答を準備する。
大事なのは、質問の文言にとらわれて枝葉の議論に引きずり込まれないよう、どのようなたずね方をされても使える形にしておくこと。どのような形で質問を投げかけられても、同じ回答を返せるようにします。 - 質問をよく聞いてキーワードを探す。
どのバケツから回答を取り出したらいいのかを選ぶ手がかりとなるキーワードを質問の中から見つけます。 - 質問者の目を見ながら、自信をもって回答する。
「十分な準備をした」と言われるスピーカーも、想定される何百もの質問についてその回答を記憶している訳ではありません。「バケツ方式」を使えば、自分に都合の良い枠組みで質問をとらえることが可能になります。
例えば、製品発表会で「X社にも同じような製品がありますが、御社の方が10%も高いのはなぜですか?」という質問に対して、「10%高い」ということにはまともに答えず、「価格についてのご質問ですね」という都合のいい形に持ち込み、「価格」というカテゴリーに関して用意していた回答を答えるわけです。
確かに「答え方が上手だなあ」と思うことがありました。このテクニックを使ってたんですねえ。質問のすり替えと紙一重ですけど。
質疑応答ではどんな質問が飛んでくるか、全く予想できません。前日の夜に安心して眠れるためには、この「バケツ方式」はかなり使えそうです。
(参考)
本書で何度も紹介されていた2007年1月9日の基調講演(iPhoneの発表)
iPhone を発表するスティーブ・ジョブス(日本語字幕) - YouTube
本書のアンコール(終わりに)で解説されている、2005年6月12日のスタンフォード大学卒業式での祝辞
スティーブ・ジョブス スタンフォード大学卒業式辞 日本語字幕版 - YouTube
プロローグ
第1幕 ストーリーを作る
第2幕 体験を提供する
- 構想はアナログでまとめる
- 一番大事な問いに答える
- 救世主的な目的意識を持つ
- ツイッターのようなヘッドラインを作る
- ロードマップを描く
- 敵役を導入する
- 正義の味方を登場させる
第3幕 仕上げと練習を行う
- 禅の心で伝える
- 数字をドレスアップする
- 「びっくりするほどキレがいい」言葉を使う
- ステージを共有する
- 小道具を上手に使う
- 「うっそー!」な瞬間を演出する
アンコール 最後にもうひとつ
- 存在感の出し方を身につける
- 簡単そうに見せる
- 目的に合った服装をする
- 台本を捨てる
- 楽しむ